心臓病トピックス公開 2026.11.07

心臓病の犬や猫は、気温・湿度・季節・気圧を気にするべき?

飼い主にとって、心臓病の犬や猫の環境をどうするかは気になることの1つです。

  • 暑い/寒いと心臓に負担?
  • 湿度が高い/低いと心臓に負担?
  • 気をつける季節はある?
  • 気圧と心臓病は関係ありますか?
  • エアコンの設定はどうすれば良い?

この記事では、これらの質問にまとめて回答します。

結論

先に結論を伝えると

  • 暑さ・寒さ・湿度・季節・気圧で心臓が悪化するかは、ほぼ不明
  • 飼い主のあなたが快適に感じる範囲に保ちましょう

になります。

「不明ばっかりじゃないですか!」というツッコミをもらいそうですが、犬や猫の心臓病と環境の関係で分かっていることは乏しく、こうお答えするしかないのが正直なところです。

しかし、逆にいえば、「この環境はダメ」と明確に分かっていることも乏しいです。
真偽が明らかでないことまで心配して毎日を過ごすのも大変ですから、なるべく正確なところを理解しておきたいものです。

以下、質問ごとに、順番に説明していきます。

暑い/寒いと心臓に負担?

残念ながら、犬猫の心臓に対する暑さや寒さの影響を調べた研究はわずかです。

犬と気温の研究

犬では、心臓病による肺水腫(肺に水がたまる)と気温の関係を調べたイタリアでの研究があります(出典)。

この研究では、肺水腫を起こす前の2週間の平均気温が

  • 暑かった(20℃超、夏)
  • 普通だった(10〜20℃、春と秋)
  • 寒かった(10℃以下、冬)

という3つのグループに分けて、肺水腫の発生率を比べています。
そして結果は、どのグループでも発生率に違いはありませんでした。

肺水腫を起こした犬の数は、暑い・普通・寒いのどの気温でもほぼ同じ(100日あたり4.6件・3.8件・4.4件)
肺水腫の件数は100日あたり。出典内の表1より作成。

「暑かろうが寒かろうが心臓病の悪化とは関係なかった」と読める結果ではありますが、著者自身が、調べた頭数の少なさや室内の温度を測っていないことなどを研究の弱点に挙げていることには注意が必要です。

また、こちらは厳密には気温というか季節との関連を調べた研究ですが、アメリカの大学病院で、急性心不全の犬の来院を調べたものがあります(出典)。
この研究では心不全の犬は9〜11月(秋)に多く、暑くもなく、寒くもない時期という結果でした。

最後に、理論的な話をすると、ものすごく暑かったり寒かったりすれば、心臓や血管への影響はありえます。
たとえば熱中症レベルに温めたり、低体温症レベルに冷やしたりすれば、血流や血圧が維持できなくなりますが(出典、出典)、こういう極端な前提を根拠に「暑さや寒さは心臓の負担!」というのはイマイチです。
本当は「普通に暮らしていたら経験する暑さや寒さが影響して心臓病を悪くするのか」という点が知りたいところですが、先に示したように今のところ分かっていることは少なく、あまり確たることはいえません。

猫と気温の研究

次に猫と気温の研究ですが、悲しいことにほぼ見当たりません。

犬と同じく、厳密には気温というか季節との関連を調べた研究ならありますが、

  • 猫の血栓症(血のかたまりが詰まる)
    イギリスの3つの動物病院で診た血栓症の猫250頭を調べたところ、季節によって血栓症の発生具合に大きな差はなかった(出典)

  • 猫の心不全
    アメリカの大学病院で、心不全で来院した猫186頭を調べたところ、冬だと心不全で来院する猫がやや多かったかも?(出典)

くらいのもので、あまり確たることがいえない微妙な結果となっています。

人間と気温の研究

参考として、人間での研究も探してみると、寒い時期は心臓病が悪化するかも、と思わせる報告が見つかります。

  • イスラエルの病院で急性心不全の患者340人を調べたら、夜に冷え込んだ日に入院が増えていた(出典)。
  • 香港で心不全の入院17万件を調べたら、平均気温が低い日ほど入院が増えていた(出典)。

ただし、どちらももともと暖かく、暖房があまり使われない地域での結果なので、「暖房を使っていても寒い季節なら同じ結果になるか?」については分かりません。
また、人で冬に心不全が増える理由の一部は、インフルエンザや肺炎、心筋梗塞など、犬ではレアな病気だろうと考えられています(出典)。

暑さ・寒さのまとめ

「心臓病の犬や猫に、暑さや寒さが心臓の負担になるか?」に対しては、「よく分からない」が結論です。
ただ、そもそも、こういうのは0か100ではなく、程度の問題です。
個人的には、極端な環境でなければ大きな問題にならないと思いますので、普通に暑すぎず、寒すぎない環境を作るようおすすめします。

湿度が高い/低いと心臓に負担?

次は湿度(しつど)の話です。
こちらも残念ながら、犬猫の心臓と湿度の関係を調べた研究は見当たりません。

人間だと、先ほど気温のところで紹介した研究が、心臓病と湿度との関係についても調べてくれています。

  • 心不全の入院と湿度の関係を調べた香港の研究(出典)
    湿度80%くらいの日に入院が一番少ない。湿度90%超えの日でも1.1倍程度の増加。

  • 冬季の心不全発症数を調べたイスラエルの研究(出典)
    湿度と心不全の関係は認められず。

ということで、湿度と心臓の関係は不明点が多いものの、そこまで心臓に害を及ぼすと考えなくても良いんじゃないでしょうか。

ただ、心臓以外のことまで考えれば、湿度は快適さに直結しますし、ジメジメが過ぎればカビの繁殖、乾燥が過ぎれば粘膜や皮膚のトラブルも増えてきます。
心臓病の愛犬の咳が気になる人は多いですが、適切に加湿をしただけで咳が改善した例は、これまでも多数経験しています。

まとめると、生活環境の湿度を適正に保ってあげることは有益ですが、その理由を「心臓への負担」にする必要はなさそうです。

心臓的に気をつけるべき季節はある?

犬猫の心臓と季節との関連についての研究はいくつか存在します。
ただし、その結果はバラバラで、「どの季節が要注意なのか?」「どの季節なら安心なのか?」という疑問に対する答えは、やはり「よく分からない」となります。

犬猫と季節の研究

すでに、暑さ/寒さのところでも紹介しましたが、以下のような研究があります。

  • 犬の心不全
    急性心不全でアメリカの大学病院に来院した犬119頭を調べたところ、秋に来院数が多かった(出典)

  • 猫の血栓症
    3つの動物病院で診た血栓症の猫250頭を調べたところ、季節によって血栓症の発生具合に大きな差はなかった(出典)

  • 猫の心不全
    心不全で来院した猫186頭を調べたところ、冬だと心不全で来院する猫がやや多かったかも?(出典)

人と季節の研究

人間での研究も紹介しておきます。

  • 心不全の入院が冬に1〜2割増えた(出典)。
    注意点として、増えた分の約5分の1は、肺炎などの呼吸器の病気でした。
    これは心臓病の犬や猫にそのまま当てはめられません。

  • 1日の寒暖差が大きいと、心不全の入院がわずかに増えた(出典)。
    こちらも注意点として、入院が増えたのは涼しい季節(11〜4月)だけで、しかも大気汚染(二酸化窒素)の影響を差し引くとほぼ変化がないという結果でした。

季節のまとめ

ということで、心臓病の犬や猫にとって厳しい/楽な季節があるかどうかという点においては、またも「よく分からない」が答えになります。

寒い季節は注意がいるのかなーという気がほんのりしないでもないですが、少なくとも、「この季節は明らかに危ない!」となるほどの証拠はありません。

個人的には、

  • 暑い季節は涼しく、寒い季節は暖かく過ごす
  • あえていえば、可能な範囲で大きな寒暖差を避ける

と、心臓病じゃない犬猫との暮らしと同じように考えることをおすすめします。

心臓病と気圧には関係がある?

犬や猫の心臓病と気圧の関係もよく分かっていません。

犬猫で心臓と気圧の関係を調べた研究を探しても、適当なものが見つかりません。

それではと人間での研究も探すと、

  • 気圧が高い or 前の日より上がったときに、心不全の入院や死亡がわずかに増えた(出典、出典)

  • 低気圧で心筋梗塞が増えたが、高気圧でも増えていた(出典)

  • 冬の急性心不全を調べたイスラエルの研究では、気圧との関係はなかった(出典)

などが見つかります。

気圧によって心臓病が増える可能性はあるかも…?という結果ですが、その増加の程度や、病気の種類(心筋梗塞は犬猫ではレアです)も加味して、犬や猫にどこまで当てはめるのか考えたいものです。

と、このように、気圧についても決定的な情報はなく、「気圧のせいで犬や猫の心臓が悪くなる!」とまではいえなさそうです。

おまけに、気温や湿度と違い、気圧はそうそう簡単にコントロールできるものではありません。
現実的には、あまり気にせず普通に過ごすのが正解じゃないかなと思います。

愛犬・愛猫の環境はどうやって作る?

「よく分からない。あまり気にするな」

とばかりいわれても、「じゃあ結局どうすれば?」という疑問が浮かぶかもしれません。

状況は家庭ごとに違うので万人に当てはまる正解はお伝えできませんが、個人的におすすめの方針も語ろうと思います。

飼い主のあなたが快適ならOK

基本は、飼い主であるあなたが快適な環境なら、それでOKです。

人と犬猫の感じ方は全く一緒ではないでしょうし、病気や加齢で弱っていれば配慮も必要かもしれませんが、おおよそ人が快適な環境なら、犬猫もだいたい快適です。
この記事を読んでいる方はまずもって動物を室内飼いしていると思いますが、動物にとっては室内というだけで圧倒的に配慮された環境であり、大抵は合格点を超えているはずです。

愛犬や愛猫がふだんよくいるところにあなたも行ってみて、そこで暑すぎず、寒すぎず、ジメジメしすぎず、乾燥しすぎもしないと感じるのであれば、ちゃんとした環境は提供できていると考えてください。

様子をみて調整

そのうえで、愛犬愛猫の様子をみて条件を調整します。
イメージとしては

  • ハアハアしていたら、温度を少し下げる
  • 丸まって震えていたら、温度を少し上げる

のような感じです。

ただし、正直にいうと、この「様子をみて」は簡単とは限りません。

たとえば、ハアハアしていても、原因は暑いからとは限りません。
暑い以外にも、興奮しているのかもしれないし、呼吸が苦しいのかもしれませんし、お腹が痛いのかもしれません。
そして当然ながら、お腹が痛くてハアハアしているときに、気温を下げても空振りに終わります。
猫にいたっては、ちょっと暑い程度ではハアハアすらしません。
よって、この原因の見極めは大切なのですが、動物たちが「暑いです」と正解を教えてくれるわけでもなく、よく観察しさえすれば確実に判断できるものでもありません。
逆に混乱させてしまうなら申し訳ないのですが、いろいろな点から総合判断して、暑い寒いなどの話なら環境を調整する、調子が悪いのなら病院に相談、と思っておいてください。

エアコンの設定はどうするべき?

「エアコンは何度に設定すれば良い?」という質問もよくもらいますが、基本となる考え方は同じです。

暑すぎず、寒すぎず、ジメジメしすぎず、乾燥しすぎずの範囲で、快適に保てばOKです。

エアコンの場合は、同じ室内でも、風が当たるところと当たらないところで環境が違ったりしますので、やはり動物がよくいるところに自分も実際に行ってみて、快適さを判断されることをおすすめします。

あとは、暑さ寒さの話とはちょっと外れますが、エアコンはどうしても使用に応じて内部が汚れ、カビなどが繁殖していきます。
動物(飼い主も)の健康という観点からは、定期的な清掃をおすすめします。

完璧主義に注意

全員ではないですが、こういう気温や湿度などの環境がすごく気になる飼い主さんの中には

  • ちゃんとした環境を用意しなければいけない
  • 環境のせいで病気を悪化させてはならない

という、完璧主義、減点主義的な考えが強い人を見かけます。

大切な存在である愛犬愛猫に何かしてあげたい、できる限りのことをしてあげたい、という気持ちはよく理解できるのですが、完璧な人などこの世に存在しません。

これまで説明してきたように

  • そもそも、分かっていることは少ない
  • はっきりした害が分かっているのは、極端な環境のとき
  • 大本の問題は、環境ではなく病気

という点も踏まえれば、「無理なくできる範囲で環境を整えてあげる」という方針もありではないでしょうか。
そして、個人的には、この記事を読んでいるような頑張り屋の飼い主さんが「無理せず用意した環境」は、動物の健康という面からは十分合格点ではないかとも思います。

仕事柄、「自分が用意する環境で愛犬愛猫の状態を悪化させてはいけない」と気を張りつめ、疲れてしまう飼い主さんも多く目にしてきました。
飼い主に100点満点の環境を用意せよと要求する動物はいないと思いますし(多分)、無理なく、笑顔でいられる、ちょうど良い程度の環境づくりを心がけてもらえたらなと思います。

まとめ

再び結論をまとめると

  • 暑さ・寒さ・湿度・季節・気圧で心臓が悪化するかは、ほぼ不明
  • 飼い主のあなたが快適に感じる範囲に保ちましょう

となります。

この情報が、あなたと愛犬愛猫が安心して毎日を過ごせる助けになりますように。